徐錫伝1


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(1)
 僕の名前は徐錫、幼名は花梨といった。
その頃…時代は魏の文帝の時代から明帝の時代に移り変わろうとしていた、新時代に向けて多くの人たちが保身のために身の振り方を変えたり新しい王朝を盛り立てるために必死に働きまわっている人たちがいるのに…いるのに…っ!ウチの親父ときたら…!

(2)
 深い霧の中、一艘の船が湖から岸をめざしてくる…船からおりてくるのはほかの誰でもない親父だ。右手に釣竿、左手に空っぽの魚篭を持ってだらしなく、目は虚ろに道を歩んでいく、足どりもおぼつかない。そしてこの親父は家に入ると…空が晴れだしたことを確認して…日向ぼっこをはじめたのだ。しばらくして雁の群れが夕日へ消えていくころ、少し冷えた体を震わせて部屋の中へ入っていき、琴を演奏しだし飽きたら軽く夕食をとって寝る。

 と、これが僕のダメ親父…徐庶の一日だ、仕事といえばたまに役所に行って書類に目を通す程度…なのだけどやけに高給取りなのだ。そんな親父を人はこぞってこう呼ぶ…既にそれはある種の称号と化していた。それは、「魏国最大のごく潰し」。

 そんな親父は墓参りにもよく出かける、全く辛気臭くてしょうがない。父が外出するのを頻度順に並べると、墓参り・釣り・役所の順番だ。ともかく、親父には生気が無く周囲の評判も正直悪い。
いや、親孝行というよい話も一応聞いたことはあるけど…それだけ。町を歩けば親父の陰口が聞こえてくることもある。正直、そんな親父を僕は情けなく思っていた。そんな頼りない親父だからか。僕も少し苛められていた…。

 学問所に出かける時には、道行く先の草むらには草が結ばれていて、当然の如く「ふぎゃ☆」 と転び、小僧たちが笑いながら走り去る。その後、僕は飛散した筆や書物を拾う…。それで、学問塾についたらついたで…僕が座る所に米粒が置いてあったりするなど、その他数々の考えうるすべての嫌がらせがありました。あと、親父の薦めで入った舞踏塾では…。
「ああっ!トゥシューズの画鋲が…」
 なんてことは勿論時代違いであり得ないけど…いわゆるお局様のようなのがいて必要以上に僕をイビる…挙句には年下にまで蔑まされるしまつです。
と、言ってしまえば簡単なのですがその他諸々のいぢめが僕を毎日待っていたのです。
ある日、学習塾の先生のあるいいつけを不注意で守られなかった時がありました。その時うしろからこんな声が聞こえてきました。
「やっぱりごく潰しの娘だなー、何にもできないのは親父にも似るわけだ。」
この一言には流石に腹をたてた僕は声の主を睨みつけました。
「…僕を愚弄する分にはかまわないが…、僕の前で親父の悪口を言うのは許しがたい…。」
声の主は私を見下げるように
「ふん、皆言っているぜ。お前の親父はろくに仕事もせずに国から給料を高く貰っているって。それがごく潰し以外の何だって言うんだ、え?」
「くっ…許せないっ!」
と、僕が掴みかかろうとした時…ずんという衝撃が
「きゃっ!痛っ…」
いきなり後ろからもう一人出てきて僕を羽交い絞めにした。
「は…放せ!」
「やっぱり駄目だな、お前は。ふう、いたぶり甲斐も無いや。ま、しばらくここで寝ていな。」
どすん
体が地面に激しく叩きつけられた…正確に言えば僕は投げ捨てられたのだ。
「…うう…、な…なんでいつもこんな目に…。」
それは親父が情けない以上に僕が弱いからだ…と考えるようになったのは僕が14歳のとき…この時は泣いて、泣いて、頼み込んだ。剣を教えてくれるように…と。すると親父は少し考えたような顔になり…黙って一本の小ぶりな剣を差し出した。
「…お前の気はわかった。明日より勉学も、剣術も、舞踊も私が教えよう。無理に外出することは無い。」
 この日を境に、親父は変わった。少なくとも僕の目に映る姿は大きく変わった。親父は剣を手にすると動きの機敏さは私では追いつけないくらいになるし、学問も天文から兵法まで、およそ学習塾では教えない実用的なことをたくさん教えてくれた。歌謡や舞踏なども非常に精通しており、私はそれなりの恥ずかしくないような芸能技術を身につけることができた。親父を尊敬できるようになったのはこの頃だ。そして3年が経過した。

(3)
 親父から学問・剣術・歌謡・舞踏の手ほどきを受け、かなり自分でもその実力はついたと自負でき、非常に充実した日々を送っていた。しかし、何かが物足りなかった。外界からの情報が少なく、刺激が無い…。外との交流が途絶えて2年、世界がどうなっているかがそぞろ気になった。外の世界が見たい、世界がどのようになっているかがわからない、だからしりたい。あの山の向こうはどうなっているのだろう、あの雲の下には何があるんだろう。帝都洛陽はどんなところだろう。泰山はどんな立派な山なのだろう…。

 知りたい気持ちばかりが募っていく…。そして僕は自然と親父の部屋にへと向かっていた。

「・・・・・・僕は…外の世界がどうなっているか知りたいのです。」
一瞬の間をおいて親父が口を開いた。
「・・・うむ、お前もいずれはそう言い出すとは思っていた、しかしお前は私の奥義を全て伝えつくしたわけではない。世の中に送り出すわけにはいかんな…。」
「親父殿、その全ての奥義と言うのはいつ教えていただけるのですか!剣を学びだして既に三年…はじめの一年に全ての技を教えていただいて…ここ2年は何も新しい技は…習っておりません。僕が未熟者だからですか?教えてもらうならばどんな修行にも耐えます!お願いします!」
親父はふぅむと少し考えてからこういいました。
「…そうか、では表に出るがよい。剣を持ってな。」
僕は喜び勇んで庭に躍り出ました。いつも剣を練習していた場所に。そこではいつも通り、親父がずんと立っていました。
「では花梨よ、お前の意思は強いことは充分に分かった。しかし、どうしても行きたいというのであれば…父であるこの私を倒していくがよい。」
親父はいつもとは違って…腰に木刀ではなく真剣を差していました、木刀を持っていた僕は少し困惑しました…。
「そんな、どうして真剣なんか…。」
「これが勝負という…倒すか倒されるか、ということなのだ…お前も早く自分の剣を持ってくるがよい。」
「うっ…でもっ…。」
躊躇する僕に親父は厳しく言った
「どうした、するのかしないのかはっきりとしないか!」
その目はいつも釣りや墓参りをしているときのような焦点の合わない目ではなく…全てをおおいかぶせるような圧倒される目でした。僕はそれに圧され、自室から親父にもらった愛用の少し短めの剣を持ってきた…そして…
「よし、ではこの私を…見事倒してみよ。でないと…お前が死ぬぞ。」
という親父の声を、目をそらして聞く…目を合わせたら…動けなくなってしまうような錯覚に襲われたから…。
「お前の相手はここにいるぞ、どこを見ているのだ!」
もう、覚悟を決めて見るしかなかった…僕は頭をあげた…
「・・・!」
声を失った、そこには今まで見たことも無いほどに堂々とした姿で立っていた。しかしその目は…少しやさしさをたたえていた…
「準備は・・・よいのだな花梨。ではかかってくるがよい…。」
「くっ…。」
苦し紛れに僕はすらりと剣を抜いた、親父に圧倒されてのことだった。
「・・・」
けれども親父は全く動じる様子は無かった…ぐっと剣を持つ手に力が入る…足にも無駄に力が入る…じとりと脇腹に嫌な汗が流れる…。

 …どれだけ時間が経過しただろうか、もう僕は限界だ、足がぐらぐらとして姿勢の維持すらつらくなってきた…親父は残暑が厳しい気候の下で汗すら流す気配がなくまるで僕のところとは別の風が流れているかのように涼しい顔で立っていた。くらっ…と、疲労からか僕の姿勢が少し崩れた。…その刹那。

ごすっ

「うあっ・・」
みぞおちに突き上げるような、えぐられるような激しい衝撃が落ちる。親父が僕の胸元に柄当てを食らわせた…ウッとつまって呼吸ができなくなる…苦しい…。がたっと前に崩れこみ、遠くなる意識の中、僕は親父が白刃を抜いたのが見えた。

 …もうだめなの…。

そのまま、僕の意識は完全に闇の中に投げこまれた…。

(4)
 目を覚ましたらいつもの寝台の上でした。胸になにか異物感、確かめると包帯がしてありました。
「つっ…」
この突然の突き刺すような痛みこそ、さっきのことが現実であったことの証…そしてなにより生きていることの証…。ちらりと仰ぎ見ると剣はいつも僕が飾っている場所にあった。けど鞘には大きな刀傷があった。今まではなかった傷が…。僕は先刻の親父の豹変ぶりを思い出し戦慄した。ざくり、と殺されていたかもしれない。それはまだまだ修行が足りないことを身をもって思い知らされた。
「ふう、やっぱりまだまだ僕はだめなのかなぁ…」
その時、女中がそろりと部屋の中に入ってきた
「あら、花梨様。お目覚めになりましたか。さあさ、お怪我のほうはたいした事はありませんけれど…今は無理をなさらずにお休みになってくださいまし。」
「…ありがとう。至らない僕なんかのために、ごめんなさい。ところでこの鞘の傷は…いつからついていたか知っているか?」
それを聞くとあらといった顔をしたながら女中は言った。
「まあ花梨様、やはり覚えていらっしゃらないのですね…」
話を聞くと、みぞおちに柄当てを受けてその場に倒れこんだ僕に、親父は一気に剣を抜いて僕の首を狙った。しかし僕は意識を失いながらも鞘でその剣をしっかりと受けていたようだ、その時にできた傷がそれらしい。…勿論覚えているわけが無い。
「・・・そうだったのか。」
背筋と首筋に寒いものが走り…わずかにぶるっと全身が震えた。丈夫な樫でできた柄に大きく剣の跡ができているのが再び目に飛び込む…死の恐怖を感じて再び嫌な汗がつっと脇腹を伝わる。
「それよりも花梨様…」
女中の一声ではっと我に返る
「父君様が目が覚め次第来るように…と仰っておりましたが、無理はなさらないでくださいませ。」
「あ…ああ、呼んでいるのだな…。では行かなければな…つっ…。」
やはり胸がズキンと痛む、そして倒れたときに腰も打ったらしく腰も痛む…立ち上がろうとして全身の痛みを感じて声をあげる。寄る女中を手で制する
「…大丈夫、一人で行くよ。ありがとう。」
こうして僕は時折壁に手をつけながら親父の部屋へと向かった、途中何度か痛みが全身を走る。親父の部屋に入ると…いつも日向ぼっこをしているばしょに親父は座っていた…。
「来たか…花梨よ、これは餞別だ。行くがよい。」
親父はさっきまで使っていた自分の剣と小包を差し出してこういったのである。
「行く…餞別って…。」
僕は意味をとりかねて尋ねた、僕は親父に負けたのに何故親父は許可するのだろうか?親父が先に口を開く。
「奥義を私はお前に示した、そしてお前は生き残った。もうこれ以上教えることは無い、不安は残るが…お前を世に送り出すことはできそうだ。それにそろそろお前も世にでてもいい年頃だ…広い世の中を自分の目で見てこい…そして次に戻ってくるときはこの父を超えるのだ。」
「・・・あ、ありがとうございます。」
思わず僕は首を垂れた、そして自分の剣の鞘の刀傷に指を当てた…。
「うむ…好きな所に行くがよい…、世の中を見てこい…もう私はお前に教えられることはあまりないからな・・。流石に、このように隠遁しているとな。これからは、若いお前の時代だ。」
もう一度、僕は頭を地面につくほど深く下げた…そして傷が癒えた3日後、僕は出立した…腰には二振りの剣を帯び、親父がくれた包みを背負って…。

(5)
 旅立ってから1週間目、僕は魏の都である洛陽に行こうと西へと向かった、政治や文化その他の多くのことに関して直接触れたいと思ったからだ。きっと心躍らせるようなことがいっぱい待っているだろう…と、期待を高ぶらせていた所に、道すがらある農村に立ち寄った。
 収穫の時期らしく、稲穂が豊かに金色の輝きをたたえている。収穫を喜ぶ民たちが小規模ながら収穫祭のようなことをやっていたので飛び入りで参加させてもらった。
「いや、すいませんね。いきなり来てみなさんの輪に入れさせてもらって…。」
「なーに気にすることはないわな。収穫の喜びはみんなの喜び、それに人は多いほうが楽しいしな。」
「おう、そうじゃな。娘さん、折角じゃから今日はこの村にちょっと泊まっていきんさいな、寺院に粗末じゃけど宿泊施設がある。別に先をいそいじょる訳じゃないやろ。」
「いいのですか?それではお言葉に甘えさせていただきます。」
予想外に村人たちの歓迎を受けた、これが人情と言うものなのだろうか?いや、単なるお祭り騒ぎというものなのかもしれない。けど楽しいからいいや…。
村人と話をして収穫の喜びや苦労、農作業についての話やおじさんたちの若い頃の話などをたくさん聞きました。
「・・・いやー、ちょっと前に俺が用事で山に入ったらな、いきなり山賊が現れたんだ。バレないようにコッソりと去ろうとしたらな、奴らのいる方向から喚声があがったんだな。絶体絶命思うたら、その喚声はなんと役所の兵士だったんだな。いやー死ぬかと思ったわ。」
「その程度甘い甘い、ワシなんか従軍したことがあるんだぞ。そのー、なんだ。ワシが…まだ若くてちょいと臨時で徴兵されたときの話、ワシは偶然後方にいて助かったんだがな。いつかまえの大司馬が命令で新野に攻め込んだとき…なーんか凄い陣でボロクソにやられたらしいんだわな。いやー命拾いしたわ。」
「爺さん、結局何もしてねぇじゃねえか!」
「なんじゃい、そんな戦乱の時代をワシは生きたのだぞ。お前らのような青二才にはなぁ…ブツブツ…」
僕は話を聞いていた、それはそれで楽しかった。すると、一人の農夫がすこし深刻な顔になってこう話し出した。
「ところでよう、お前は今年、どれくらい冠桀から米を押し付けられた…?」
「お、俺か?俺は3枡だ。お前は?」
「おらは4枡だ…全く参るよな…別にいらねえのに押し付けられるなんてよ…。」
「ほんにのぅ」
少しは話を呑めなかった僕は聞いてみることにした。
「あのー、冠桀って何ですか?米を押し付けるって…。」
「お…そだな…あまり大きな声では言えねぇけれどよ、ここ一帯の統治を委託されたちょっとした土豪だよ。かなりのケチでセコい男でな、毎年春の種籾を植える時期になると各家に小さい枡で米を何杯か貸し付けるんだよ。断ると余裕があると判断されてな、臨時の課税を受けちまうんだ。」
「へぇ…なんかムチャな話ですね、で、借りた米を利子つけて返すんですか?」
「ああ、利子は貸し付けた分の1.5倍だ。それだけないいんだけどな、返すときの枡は…あきらかにでかいんだ。結局倍以上持って行きやがる。まったくセコイやつだな、」
そうじゃそうじゃ、とほぼ全員が声を合わせて同意する。
「それ以外にもな、祭祀のためだー。とかいっていろいろ俺たちから供物を集めるんだがな…半分以上が奴の手元に残るって話だ・・せこいぜ。」
まったくじゃ、まったくじゃ。と全員が連呼する…しかし本当にセコい話だな…。
「それは大変ですね…全くせこい人間もいるもんだなぁ…。」
「そうじゃな、そのうち天罰でも当たればいいのに…のう。皆の衆」
当然じゃ、当然じゃ。という声が祭り会場を覆う…かなり変だ。
「まあみんな、今日はめでたい収穫祭じゃ。そういう恨み話はまた今度にして…今日は呑もうぞ。踊ろうぞ。」
ごもっともじゃ、ごもっともじゃ。という声と共に一斉に踊りだした…この謎の連帯感に少し脱力した…。

 こうして祭りは夜遅くまで続き、少し酔った僕は近くの道教寺院に厄介になることにした…その道中、月明かりに照らされるやけに立派な屋敷が目に付いた。
「ははあ、これがその冠桀とかいう奴の屋敷に間違いないな…。」
あの話を聞いて少し腹がたってういたので少し驚かせてやろうと思い、侵入を図った。
あっさりと侵入に成功し、少し広い所に出た。すると前方から夜だから月明かりに照らされているも顔はあまりわからないがだいぶ肥えた男が歩いてきた。直感的に冠桀に間違いないと思い、僕は一気に物陰から飛び出した。
「お前が冠桀かっ。」
僕が前方にサッと躍り出るとその男は驚き、しりもちをついて倒れこんだ
「ひいっ…い…いかにも冠桀だが・・。き…貴様は何者じゃ!」
僕は冠桀に向かって剣を抜き身で突き出した…しかし次の瞬間。
「うがっ…な…がはっ。」
という声と共に生暖かい液が大量に私にかかってきた、そして右手には間違いなく…何か斬ったような感触があった。
冠桀はどすっ…と、音を立て、仰向けに倒れた、首から大量の血を噴出しながら…
「う…、嘘。」
僕の酔いは一気にさめた、しかしいくら酔っていたとしても、いつも使う剣ならば間合いというのが体に染み付いていて誤るなんてことはありえない筈だった…けれども落ち着いて剣を見てみるとそれは親父から貰った剣でした、しかも真っ赤に染まっていました…月明かりに血の赤が映える…物音を聞きつけて誰か来るといけないから僕はすぐさまその場を離れ、さらに急いで村を離れた。

 村からできるだけ遠ざかろうと走る。血のにおいがプンと鼻をつく…とりあえず血のついた体と服を軽く洗おうと思い、川へと急いだ。

(6)
 草木も眠る時刻に僕がたどり着いたのは確か黄河でした、親父から貰った刀を手入れし、次に血やら砂埃やらで汚れた服を念入りにごし ごしと洗い…最後に汗を流そうと薄着で黄河に浸かった。
「…ふう。」
思ったより暖かい水に浸かって僕は考えた、親父から譲り受けた剣で最初に斬ったのが…こんなことになるなんて親父に申し訳ない。勿論殺すつもりなんてなかった、でも僕の過失だ。利き手に長剣、もう一方に短剣というのが…僕が木刀で練習していた二刀流だ。本当に偶然に過ぎない…けど、右手に残るこの生々しい感触がそんな甘い考えをさせてくれない。
「…どうしようかなー。」
ちゃぷりと水の流れに身を任せる…こういうことはいずれバレる、住人の祭り会場に突如現れて去っていった一人の剣士、妖しいにきまっているし…その上顔が知られてしまっている遅かれ早かれ足はつく。
「…洛陽に行くのは拙い…かな。」
そう、洛陽に行くには関をたくさん通らなければならない、その間に手配書が出回っていたらお仕舞いだ。
「…蜀に行こうかな…、この河を越えて・・・。国外逃亡…だね…よしっ!」
川底に足をつけて…僕は決意した。この黄河を越えて、別の国に行く…と。気がつけばかなり流されていたらしく服を乾かしている場所からかなり遠ざかってしまっていた…。秋風が濡れた体にかなり寒く感じた…。
「・・・・クシュン…。」
くしゃみが出た、とりあえずは火をおこして体を冷やさないようにして…眠りについた。空には無数の星が陰りなくまたたいていた。



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